伝家の宝刀 ②

posted by 2022.04.21

nihontou_youtou

 前回の続きでタワマン節税に関する最高裁判断について見ていきます。

 

 ポイントは2点あります。

1.土地をどう評価するのか
2.伝家の宝刀を使っていいのか

 

1.土地をどう評価するのか

① 主張内容

・納税者:財産評価基本通達に基づいて路線価で評価 3.3億円

・国税局:不動産鑑定評価 12.7億円

・購入額:亡くなる3年前 13.9億円

 

② 最高裁

・路線価などによる画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合は(例外規定を用いる)合理的な理由がある。

 ではどの程度の差であれば”公平でない”のかは特に基準はなくケースバイケースになります。
今回は4倍もの差があったのでさすがに路線価評価は無理があると判断していますが、路線価自体が元々時価の8割を目安としてますし、値動きの激しい都心部であればその開きは大きくなります。

 

2.伝家の宝刀を使っていいのか

① 主張

・納税者:事業承継のためにしたことで租税回避目的ではない

・国税局:銀行の稟議書等を見る限り、相続税負担が減ることを知り、かつ期待して企画実行している

 

② 最高裁

相続税の負担軽減を意図して不動産の購入と資金の借り入れが行われ、実際に相続税額がゼロになっている

・他の納税者との間に看過しがたい不均衡が生じ、租税負担の公平に反する

 

 結果と意図の両面から不均衡が生じているという判断です。

 1の評価方法、2の伝家の宝刀の是非のいずれについても今回の事例の特殊性に着目しているので、基準が明示されたとは言えず、今後の税務判断の目安になりそうな内容ではありませんでした。
どちらかというと現状の実務を追認したようなところがあります。

 ちなみに今回の事例では物件が2つあり、1つは亡くなってから9か月後に鑑定評価額に近い金額で売れているのですがそのことは特に判断には影響しなかったようです。
それを理由にすると、5年売らずに置いておけば大幅な節税も許容されると解釈されてしまうからかも知れません。

 

 今回の判断は基準がない上に租税回避の意図が問題とされるなど対応が難しい面がありますが、不動産購入による節税に関しては慎重な判断が求められそうです。