寄付と相続税 ② 相続財産による寄付

posted by 2022.02.15

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 昨日の続きで「相続財産による寄付」の税金と注意点について見ていきます。

 

2.税金の取扱い

① 相続財産による寄付

<概要>

 被相続人の遺言ではなく、相続で取得した財産の中から相続人の意思で行う寄付を言います。
相続人が一旦受け取っているので相続税の課税対象ですが、要件を満たせば相続税は非課税となります。

 

<非課税の要件>

・相続又は遺贈により取得した財産を寄付(生命保険金等のみなし財産含む)

相続税の申告期限(死亡後10か月以内)までに寄付

国、地方公共団体、特定の公益法人等への寄付

 遺言による寄付の場合は、一般社団法人、認定でないNPO法人、宗教法人等であっても非営利型であれば軽減の対象でしたが、相続人が寄付する場合は公益社団法人、公益財団法人、認定NPO法人、学校法人、社会福祉法人などに限定されます。

 

<所得税の軽減>

 相続人の相続税が非課税になるだけでなく、相続人の所得税でも寄付金控除が受けられます。
この点は遺言による寄付にはないメリットと言えます。

 

3.注意点

① 不動産や株式の寄付(遺言による寄付)

 不動産や株式など含み益のある財産を特定遺贈すると含み益に譲渡課税されるケースがあります。
含み益に課税できないまま遺贈により財産が移転していくのを防ぐために、売って現金化してから寄付したと考えます。
しかも譲渡税を払うのは受け取る団体ではなく相続人です。
みなし譲渡が非課税になる特例もありますが、事前準備に数年必要で要件も狭いため難易度は高いです。

 相続人へのみなし譲渡課税を避けるには税金を払った後の手取りを寄付する「清算型遺贈」にしておく必要があります。
またそもそも不動産による遺贈を受けない団体もあるので事前相談をしておくべきでしょう。

 

② 遺留分(遺言による寄付)

 全財産を寄付する、という遺言を書いたとしても相続人には最低限保証される遺留分があります
遺留分を侵害された相続人は寄付を受けた団体に対して遺留分侵害額の請求ができるため紛争に発展する可能性もあります。
紛争を避けるためには遺留分への配慮も必要になってきます。

 

 寄付に関する法律や税金は複雑な内容も多いので、事前に専門家への相談と寄付先への相談をお勧めします。