昨日からの続きで、いよいよ判決内容です。
競馬による儲けが一時所得に区分されると、ハズレ馬券は経費になりません。ところが今回の裁判では、一時所得ではなく雑所得とされました。
「雑所得」というのは、約10種類ある所得区分のどれにも当てはまらないものをいいます。「その他の所得」という感じです。
そして、雑所得の経費は一時所得よりも範囲が広くなります。普通の商売などと同じように考えてOKです。
例えば、仕事をもらうために得意先の担当者を接待しまくったけど受注には至らなかった、という場合、雑所得ならこの接待費は経費になります。一時所得のように、収入に結びつかなかったから経費として認めない、ということはありません。
競馬の儲けが雑所得とされると、ハズレ馬券は経費になります。そのため、Aさんの納税額は5億7千万円から5千万円へと大幅に減額されました。ただ、確定申告をしなかったことまでは許してもらえず、懲役2カ月、執行猶予2年の有罪判決を受けました。
では、なぜ雑所得とされたのか。
条文では、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」は、一時所得に該当しないこととされています。判決文をまだ読んでいないのですが、この辺が理由かなと思っています。
Aさんは3年間で28億円も馬券を購入しています。これはもう趣味の範囲を超えています。裁判官も「ここまでくると資産運用だ」と言っています。
職業柄、納税者が勝ったと聞くとうれしいのですが、ちょっと意地悪に考えてみましょう。
Aさんは30億円の払戻しを受けましたが、28億円は馬券購入で消えています。手元に残ったお金は2億円もないのに、5億円以上の税金を払えというのはちょっと酷な気がします。でも次のケースで考えるとどうでしょう。
①競馬で100万円儲けたけど、全部飲み食いで使っちゃいました。お金が無いので税金払えません。
②競馬で100万円儲けたけど、全部パチンコで使っちゃいました。お金が無いので税金払えません。
③競馬で100万円儲けたけど、全部競馬で使っちゃいました。お金が無いので税金払えません。
こうして並べてみると、どれも「使ったお前が悪いんだよ、ちゃんと税金払ってよね」と言いたくなりませんか。Aさんの場合も、税金として払うべきお金を競馬で使っちゃっただけ、と言えなくもないです。
ただ、今回の判決は地裁です。検察側は控訴しましたし、「納税者逆転敗訴」というのもよくある話。どっちに転ぶか、まだまだ分かりません。
まあどっちにせよ、今回の裁判は特殊なケース。誰にでも当てはまるものではありません。Aさんのように億単位で馬券を買っている人以外は、従来通りの「一時所得」と思っておきましょう。