ウーバーと質問検査権

posted by 2021.07.1

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 東京国税局がウーバーイーツジャパンに対して、配達員の報酬についての情報提供を求めたことがニュースになっていました。

 

 ウーバーの配達員は給料ではなく、個人事業主扱いで受け取っているため、副業としての儲けが年間20万円を超えると確定申告をする義務あります。
確定申告していない人も少なくないと予想され、今回の情報を元にちゃんと申告しているかどうかの突き合わせが行われます。

 

 今回のテーマは「副業の確定申告」ではなく、
「ウーバーは国税局からの情報提供要請に応じる義務があるのか?」
という点について見ていきます。

 税務調査において、調査官が会社等に対して質問したり、資料提供を求めることができる権限を「質問検査権」と言います。
どういう時に質問検査権を行使できるかというと『調査官が必要であると判断』したときです。

 納税者はこれを拒否できるかというとできません。
正当な理由なく資料提出等に応じない場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という重い罰則があります。
とは言え、罰則が発動されることはほとんどなく、実務上は趣旨を説明した上で資料の提出をお願いするという形になっています。

 では資料提出の要請などに応じなくていい『正当な理由』は何かというと災害で滅失するなど直ちに提示提出することが物理的に困難な場合が該当します。
一方、納税者が医者や弁護士にように職業上の守秘義務が課される場合、宗教法人のように個人の信教に関する情報を保有している場合、その他業務用の秘密が記載されている場合なども情報提供に抵抗はありますが、この場合は拒否する正当な理由にはなりません。
質問検査権があること、調査官に守秘義務があることを説明され、提出を要請されることになります。

 

 今回のウーバーイーツの件に関しても、配達員の確定申告が漏れている可能性がある(あるいは既に漏れていた事例があった)ことにより『調査官が必要であると判断』し、提出に応じざるを得なかったものと考えられます。

 一般の会社においても出したくない資料もあるかも知れませんが、逆に変に疑われることにもなりかねませんし、正当な理由なく拒絶できないということは知っておきましょう。