任意後見制度の守備範囲とデメリット

posted by 2020.12.10

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 昨日の続きで任意後見制度について見ていきます。

 任意後見制度でできることとして「財産管理」「身上監護」とがあります。
「身上監護(しんじょうかんご)」というのは聞きなれない難しい言葉ですが、被後見人の生活・医療・介護などに関する契約や手続きを行うことを言います。あくまで事務手続きなので、直接介護する行為は含まれません

 

<任意後見契約でできること>

 どこまでを後見人に依頼するかは契約で定めることができますが、法律上の範囲を超えることはできません。

① 入退院の手続きや医療費の支払い
② 不動産等の財産の管理・保存・処分
③ 自宅となる賃貸住宅の契約
④ 預金や保険の管理
⑤ 年金や福祉手当等の受取り
⑥ 生活必需品の購入や光熱費の支払い
⑦ 介護施設やサービスに関する契約
⑧ 要介護認定の申請や異議申立て
⑨ 遺産分割協議
⑩ 重要書類や印鑑通帳などの保管

 

 

<デメリット>

 一方、任意後見契約にはデメリットもあります。

① 本人又は家族のやりくりとの比較

・費用がかかる

 財産額によって変わりますが、月3万円以上はかかります。
家族を後見人にすれば報酬をゼロにもできますが、それでも任意後見監督人(家庭裁判所が選任)の報酬は発生します。

・自由にお金を使えない

 通帳を含めて全ての財産を預けるので、日常の買い物を除いて自由にお金を使うことができなくなります。

・死後の処理は委任できない

 亡くなった時点で契約は終了します。

・財産管理は現状維持が基本

 不動産等の売却に関して柔軟な判断ができず、財産を増やすための積極投資もできません。

 

② 法定後見制度との比較

・取消権がない

 本人(被後見人)が詐欺などで不要な商品を購入しても任意後見人は契約を取り消すことができません。家庭裁判所が選任する法定後見の場合には取消権があります。

 

 資産運用に関して柔軟性が欠けることがデメリットの1つですが、自由度が高い仕組みとして「民事信託」があります。

 民事信託の内容については次回へ続きます。