年末調整の電子化 ③ 従業員準備編

posted by 2020.08.27

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 前回の続きで、年末調整の電子化に関して従業員が準備する内容を見ていきます。

そもそも従業員さんにとって年末調整の何を電子化するかというと、

1.控除証明書等をデータで取得する

2.年調ソフトで申告書を作成し、勤務先にデータで提出する

という2点です。

 

1.控除証明書等のデータ取得

 データ取得には2つの方法があります。

① マイナポータル連携

<概要>
 マイナポータルに控除証明書のデータを集約し、一括取得する方法。
年調ソフトに取り込むことで自動的に申告書データができあがるのでこちらが推奨されています。

<準備と流れ>
・マイナンバーカードの取得(1か月近くかかります)
・カードを読み取れるスマホまたはICカードリーダライタ
・マイナポータル開設(すぐできます)
・e私書箱など民間送達サービスの申し込み(保険の証券番号必要)
・年調ソフトのダウンロード

 

② 保険会社のHPからダウンロード

<概要>
 保険会社HPのお客様ページから控除証明書データをダウンロードする方法。
保険会社ごとに作業が必要です。

<準備>
・年調ソフトのダウンロード

 

2.申告書データ作成と送信

① マイナポータル連携

保険会社とマイナポータルを連携して申告書作成
・申告書データと控除証明書データを会社へ送信

② 保険会社のHPからダウンロード

各保険会社のHPから控除証明書データをダウンロード
・申告書データと控除証明書データを会社へ送信

 

 1に関してはマイナンバーカードの取得や民間送達サービスの開設に時間がかかることを考慮すると、年末調整の2か月前には会社から従業員さんに周知しておく必要があり、9月頃が目安となります。

 

 電子化するなら上記1.2の両方を実施するのが最も効率的ですが、簡易的に書面と組み合わせる方法もあります。
1回目でご紹介した、レベル1~3です。
その場合の準備と作業は次の通りです。

<レベル1 控除証明書の取得:紙、申告書と証明書の提出:紙>
・年調ソフトのダウンロード
・従業員が証明書を見ながら申告書データを作成
・申告書を印刷して控除証明書原本と共に会社へ提出

<レベル2 控除証明書の取得:データ、申告書と証明書の提出:紙>
・年調ソフトのダウンロード
・マイナポータル連携または保険会社からデータをダウンロード
・従業員がデータを年調ソフトにインポートして申告書データ作成
・申告書を印刷して会社へ提出
・控除証明書はQRコードに変換して紙で提出(ソフトはe‐TAX提供)

<レベル3 控除証明書の取得:紙、申告書と証明書の提出:データ>
・年調ソフトのダウンロード
・従業員が証明書を見ながら申告書データを作成
・申告書データと控除証明書データを会社へ送信

 いずれも年調ソフトを使って従業員さんに作業してもらうことになるので、そこまでするなら全て電子化した方が来年以降が楽です。

 

 はっきり言ってそれなりにややこしく、周知や指導に手間がかかるので、ある程度の規模がないと従来の「手書き+紙提出」の方が楽かも知れません。

 業務効率化や電子保存できることなどメリットは素晴らしいのですが、手間と複雑さを考えると、マイナンバーカードの取得率向上とシステムの簡易化が電子化普及のカギになると思われます。