納税の猶予申請書の書き方

posted by 2020.05.11

 前回の続きで「納税猶予の特例制度」の具体的な手続きや注意点について見ていきます。

<概要>
 2月以降の売上が前年同月比概ね20%以上減少している場合には、無担保かつ延滞税なしで納税が1年猶予されます。

 

<書類の書き方>

① 必要な情報

・2月以降の売上及び前年同月の売上(できれば3か月分)

・2月以降の支出(仕入、経費、借入返済、生活費)

・現金預貯金の残高

 

② 猶予額の計算

・売上を書く欄は3か月分ありますが、20%減の要件を満たしていれば1か月分だけでもOKです。3か月分書いても一番下落幅が大きい月で判定するだけです。

経費は今後半年の運転資金を知るために書くので今年の1~3か月分だけでOKです。口頭聞き取りでもいいぐらいなのでだいたいの数字で構いません。

・生活費という欄がありますがこれは個人の場合のみです。法人の場合は役員報酬として「販売費/一般管理費」に含まれます。

不動産賃貸業に関しては、家賃を減額せず猶予している場合でも「収入の減少」に該当します。

今後半年の運転資金と申請時点の現金預貯金残高との差で納付可能金額を計算します。半年分の運転資金を預金でプールしている会社はそうないと思いますが、この金額が大きいと支払余力があるので納税猶予は受けられません。

換価猶予を合わせて申請する場合のチェック欄については、念のためチェックしておいてもいいでしょう。これは無担保かつ延滞税なしの特例が受けられなかった場合に、従来からある換価猶予に切り替えて申請する、というものです。

毎月発生する源泉所得税については、2~3か月分まとめて申請することも可能です。その場合翌月10日の納期限は過ぎてしまいますが、「資金繰りの手続き等のため猶予申請の時間を確保できなかった」というやむを得ない理由があったという理屈にしてくれます。

 

③ 書類の添付

・今年と前年の収支が分かる元帳、売上帳、試算表等

・現金出納帳や預金通帳

・資料が準備できない場合は職員による聞き取りでも対応してくれるそうなので必ずしも書類は添付しなくていいかも知れませんが、問い合わせがあった場合に提示できるようにはしておきましょう。

 

④ 結果の通知

1~2週間で「猶予許可通知書」が到着する予定です。

・延滞税免除など猶予の効果は許可日ではなく申請日から有効です。

通知書のコピーは地方税や社会保険料の納税猶予にも使えます。

 

⑤ 留意点

≪猶予期間≫

本来の納付期限から原則1年です。1年後に一括納付できない場合はそこから分割納付することも可能ですが、その場合は通常の納税猶予と同じなので延滞税が1.6%かかります。

中間申告分や予定納税分の猶予期間は確定申告期限までとなり、1年にはなりません。これはあくまでも確定税額の一部前払いであるためです。

 

≪申請期限≫

6/30と納期限のいずれか遅い日までです。従来の制度は納期限から6か月以内だったので短くなっています。なお12~2月決算や個人については納期限は過ぎていますが、その場合は遅い方の6/30が期限になります。

 

 納税猶予については少々条件が外れていても要相談で実情に応じて対応してくれます。
どれだけ猶予するかは今後の資金繰りや次年度の納税と合わせて判断することになりますが、とりあえずは1年で申請しておいて払える状況になったら前倒しで払うということでいいのではないでしょうか。

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