配偶者居住権とは ④ 相続税への影響

posted by 2019.09.24

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 前回からの続きで、配偶者居住権相続税の関係について段階ごとに見ていきます。

 

<相続時>

 財産としては1つのものが2つに分かれただけで、この時点では増減はありません
では税法上の特典についてはどうなるのでしょうか。

・配偶者に対する相続税額の軽減

 配偶者が相続する財産については、1億6000万円又は法定相続分までであれば相続税がかかりません。
配偶者居住権についても、この規定の適用がありますので、従来と比べると相続税の総額は減ることになります。

・小規模宅地等の特例

 自宅底地の80%減額に関しては、配偶者であればほぼ無条件で適用があり、親族であれば同居や継続居住などを要件として適用があります。
配偶者居住権が設定された場合、配偶者の相続する敷地利用権は当然として、親族が相続する敷地所有権(底地)についても要件を満たせば適用があります。具体的には、同居している場合や生計一親族である場合に適用があります。

 

<配偶者死亡時・存続期間満了時>

 課税関係は生じません。
これは制度の趣旨通り利用されていて恣意性もないためです。
時相続の段階で、配偶者居住権及びその敷地所有権部分が減少して、期間満了で消滅することから、相続税の節税効果があります。

 

<途中で解除した場合>

 存続期間の途中で、配偶者居住権の合意解除、放棄、立ち退き請求があった場合で、建物や土地の所有者が適正な対価を支払わなかった場合は贈与税が課税されます。

 

<注意点>

 固定資産税については土地や建物の所有者が負担するのが原則です。
民法では「居住建物の通常の必要費は配偶者が負担する」とされており、所有者は配偶者に請求することができます。
あとでややこしくならないように、配偶者居住権設定の段階で、固定資産税など維持費の負担について文書で合意しておいた方がいいでしょう。

 

<使う?使わない?>

 配偶者が住み慣れた家に住み続けられる、配偶者居住権以外の財産で遺産分割協議ができて配偶者の生活が安定する、という意味では画期的な制度です。
逆に言うと配偶者の権利が強すぎて、土地や建物の所有者にとっては”融通の利かない”状態とも言えます。
そのあたりを踏まえて制度の活用を考えていくことになるでしょう。