適正な役員報酬とは ③ 裁決事例

posted by 2018.04.17

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 前回の続きで役員給与に関する裁決事例を取り上げます。
前回の酒造メーカーは地裁高裁まで進んだ事件ですが、今回取り上げる自動車販売業の会社は裁決事例です。

「税務調査⇒税務署の更正⇒異議申立て⇒棄却⇒審査請求⇒裁決」という流れなので裁判には至ってませんが考え方としては酒造メーカーの事件を踏襲しています。

 

①  概要
・中古自動車の輸出を行なう自動車販売業。
社長の給料が不相当に高額で経費にならない部分があるかどうかが争点。

 

②  国税主張
同業類似法人と比較。売上は1/2以上2倍以下の倍半基準。
職務内容、収益の状況、従業員給料の状況を同業類似法人と比較。
・最高額と比較しても明らかに高額。

 

③  納税者主張
・閲覧できない同業類似法人のデータは比較の根拠にならない。
・同業類似法人の抽出が業種、地域、売上のみであること、企業の選択の面等で合理性がない。
当社の社長は同業と比較して業務範囲が格別に広いので最高額でも参考にならない。
・役員給与の妥当性と売上の増減は無関係。
・従業員給料も退職等の事情を考慮すればむしろ増加している。

 

④  審判所
高額な役員給与を損金不算入にするのは恣意性を排除して課税の公平性を確保するため。
社長なので業務が事業全般にわたるのは当然で一般の想定内。
同業類似法人の最高額と比較することで貢献度は考慮されている。
収益や従業員給与は概ね一定なのに役員給与はその間に2.3倍~4.3倍に伸びている。
・同業類似法人の抽出はあくまで参考資料であり、厳密さは必要ない。
本件会社よりはるかに業績のいい同業類似法人の最高額(8295~9245万円)を超える部分は高額であるため損金不算入。

 

⑤  ポイント
収益や従業員給料の推移を参考にする点、同業類似法人の最高額を参考にする点は酒造メーカーの事件と同じ考え方。
・同業類似法人と比較はするものの役員給与の多い少ないはやはり判断が難しい。今回は収益や従業員給料は一定なのに役員給与が4倍以上になっている点を問題視。
・今回は1億円超の高額な役員給与がさらに増えていっている。会社の裁量の範囲とは言え、高額な役員給与の大幅な増加は根拠付けが必要。

 

 前回の裁判に続いて、今回の裁決でも同じ考え方なので今後もこの傾向が続く可能性があります。
役員給与を大幅に増額する際はポイントを押さえて対応する必要があります。