適正な役員報酬とは ② 裁判例

posted by 2018.04.16

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 前回の続きで適正な役員報酬に関する裁判例を見ていきます。

<酒造メーカーH社>

①  概要
・役員は社長本人と妻、子2人で仕事内容は一般的。
社長は新製品の開発に成功し、売上や経常利益の増加に大きく貢献している。

 

②  国税主張
・事業規模等が類似する法人の平均額より多い部分が過大
事業規模は売上が0.5倍以上2倍未満の会社(倍半基準)。

 

③  納税者主張
・社長は成長への貢献度も高いことから類似法人の平均額ではなく最高額を基準にすべき。
・そもそも類似法人の情報を集めることは不可能。
・倍半基準では類似法人は抽出できない。
・個人で所得税を多く払っているから租税回避ではない。

 

④ 裁判所の判断(納税者敗訴)
売上と給与には相関関係があり、類似法人を抽出する方法として倍半基準は合理的。
役員の経営能力は判断基準としては曖昧で不相当。
収益状況が悪化しているのに役員給与が増えているので過大。
従業員給料が増加していないのに役員給与が増えているので過大。
・租税回避してないから過大でない、という理屈にはならない。
類似法人の確定的な金額は入手できなくても国税庁の資料や雑誌等入手可能な資料からある程度は判断できる。

 

⑤ ポイント
・役員給与は過大とされたものの類似法人の平均額ではなく最高額が基準とされたことは異例。
収益状況や従業員給料と連動するのが合理的。
・所得税いっぱい払ってるやん、は理由にならない。
他社の情報を探して比較する努力は必要。

 

 この後の自動車販売業に関する裁決でも同じような判断がされており、基準として確定してきている感があります。
自動車販売業の事例については次回見ていきます。