税制改正大綱 ⑧ 小規模宅地の評価減縮小

posted by 2018.01.5

job_ooya

 新年あけましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願い致します。

 

 去年からの続きの税制改正大綱シリーズで、8回目の今回は小規模宅地の評価減の縮小について見ていきます。

 小規模宅地の評価減とは相続した土地が居住用や事業用である場合に継続して使用できるよう相続税を50%または80%減額する特例です。

 今回改正されたのは3点。うち2つは増税、1つは減税です。

 

1.家なき子の縮小

<改正前>

 被相続人に配偶者及び同居親族がいない状態で、非同居親族が被相続人が住んでいた土地を相続した場合には80%減額されます。
非同居親族には賃貸住宅に住んでいるなど3年以内に持ち家(本人又は配偶者名義)に住んだことがないという条件がついています。

 ちょっと分かりにくいので想定している典型例で言うと、亡くなった方が独り身で、子どもはいずれ実家に帰るつもりだが今は仕事の都合で遠方で賃貸に住んでいるようなケースです。

<改正内容>

 3年以内に持ち家に住んだことがない、という条件をクリアするためにわざわざ名義を変える例が目立ったため、改正で次の場合が除外されます。

・3年以内に3親等内の親族又は関係会社が所有する国内の家屋に居住したことがある者。
・相続開始時に相続人が住んでいた家屋を過去に所有していたことがある者。

 改正前は本人または配偶者が所有していた家屋だったのが3親等まで広げられ、さらに同族会社が社宅にしている場合も想定しています。
また子どもが持ち家をわざわざ身内に名義を変えて住み続ける場合も対象外となります。

 

2.貸付事業用の縮小

<改正前>

 相続開始時点で貸し付けている土地に関しては50%減額されます。

<改正内容>

 相続直前に貸付事業を開始した場合が除外されます。

・相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された土地を除外。

・ただし3年以上前から事業的規模で貸付事業を行なっていればOK

 相続直前に軽減を受けるためだけに形式上知り合いに貸した場合などを想定しています。
事業的規模については5棟10室など所得税の基準で判定されると考えられます。

 

3.介護医療院入所時の扱い

<改正前>

 被相続人が相続時に特養、有料老人ホーム、老健、サ高住などに住んでいるのはやむを得ない事情であるし、治癒等すれば自宅に戻ってくる可能性もあることから住んでいるものとして自宅土地が80%減額されます。

<改正内容>

 介護医療院という医療機能を有する介護施設が平成30年4月にスタートするのでこれも対象に加えられます。

 

4.適用時期

 平成30年4月1日以後の相続から適用されます。
ただし2の貸付事業については同日前から貸し付けられている土地に関しては増税は適用されません。
逆に言うと貸付けを新たに始めるなら平成30年3月31日までなら、たとえ3年以内に相続があっても50%減額が受けられることになります。

 

 今回の改正は制度の隙をつく「テクニック」を封じ込めるもので通常の場合は影響はありません。
ただ貸付事業を始めた方がたまたま3年以内に亡くなったしまった場合は不運な改正になってしまいます。