前回、中小企業は配当が有利か役員報酬が有利かについて税制面の判断基準を列挙しましたが、様々な要素が絡むだけに計算してみないと分からない部分があります。
そこで現実的な数字を入れてみて検証してみたいと思います。
<例>
・大阪市内にある資本金1000万円の標準税率の法人。
・役員報酬は月60万円、他の個人所得はなし。
・法人の利益は年間800万円。
・配当を200万円出すかどうか。
<配当なし>
・所得税及び住民税 1,047,500円
個人の年収は給与720万円。
・法人税、事業税、府市民税 1,747,600円
実効税率は30%を切っていたはずですが、それはあくまで外形標準課税のある大企業の場合なので、大阪市の中小企業の場合は現状33.8%になります。
この例は所得が800万円以下なので中小企業の軽減税率が使えており、法人税等の負担率は約21.8%になっています。
・税負担計 2,795,100円
<配当200万円>
・所得税等 1,391,500円
個人の収入は給与720万円と配当200万円。
・法人税等 1,747,600円
配当は税引後利益から行なうので法人税の負担は変わらず。
・税負担計 3,139,100円
<役員賞与200万円>(事前届出している場合)
・所得税等 1,587,500円
個人の収入は給与920万円。
・法人税等 1,293,700円
賞与が経費化されて所得圧縮。
・税負担計 2,881,200円
この例では配当もせず、役員賞与も出さないのが税金的には最も有利となりました。理由としては法人税の税率で中小企業の軽減された部分を使えていることがあり、逆に法人の所得が800万円を大きく超えてくると法人の実効税率が33.8%に近づくため、役員賞与を出した方が有利になります。
一般的には所得が大きいほど累進課税(最高税率55%)の個人より、固定の法人税(最高でも約34%)の方が税負担率が低くなります。
また法人で税金を払い税引後利益を積み上げる方が会社の信用力や経営体力が向上し、融資を受けやすいというメリットがあります。
一方、法人と個人で税負担率が大きく変わらないなら役員報酬をできるだけ出して個人で貯蓄し、会社が危機の時は個人財産を拠出して助けるというやり方もあります。
感覚的に言うと、年に1回又は2回払う法人税はまとまっているため重く感じますし、所得税や住民税は報酬増額で増えても天引きされるため負担感はあまりないでしょう。
目先の感覚ではなく利益をどう残して会社をどう守っていくのかをメインに考え、そこに税金の有利不利も賢く加味しながら配当と役員報酬の配分についても考えていだだきたいところです。