マイナス金利と退職金

posted by 2016.04.25

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「退職給付債務の増加で赤字転落」

こんな決算発表の記事がありましたがどういうことなんでしょうか。

 

 まず”退職給付債務”ですが、これは今いる社員に将来払う退職金を計算して現時点の負債として会計上認識するものです。

 例えば30歳、勤続10年の人に将来払う退職金が現時点で100万円だとしてもこれをそのまま負債にするわけではありません。
実際に払うのは中途退職しない限り30年後なので、その期間の運用益が発生します。
30年間2%で運用し続けると約1.8倍になるので現時点では約55万円あればいいことになります。
この2%を”割引率”と言い各企業が設定しますが、マイナス金利により割引率も低下せざるを得ません。
運用利回りが下がるということが負債が増えることになるので退職給付債務に積立不足が発生し、損失として認識されてしまいます。

 

 景気が悪い時期には大手企業が巨額の積立不足で赤字になっている記事が多かったことが思い出されます。
当時は業績が退職金で振り回されることを嫌って確定拠出年金を採用する企業が増えました。
これは退職金を自己責任で社員に運用してもらうことによって企業の負債から切り離すというものです。
マイナス金利がしばらく続くようであれば確定拠出年金を導入する企業が今後増えるかも知れません。

 さほどメリットを実感できないマイナス金利ですがいろんなところに影響は出てきそうです。